会社の金が底をつく夜、彼はロケットを諦めなかった
2008年、テキサスの管制センター。スペースXの3回目のロケット打ち上げが失敗に終わった瞬間、チームの誰もが言葉を失った。1回目、2回目、そして3回目。ファルコン1は3度、空に消えた。 同じ年、テスラは経営危機の瀬戸際にあった。リーマンシ…
27年間、独房で法律書を読み続けた男の話
1964年。南アフリカの法廷で、ネルソン・マンデラは終身刑を言い渡された。彼は46歳だった。ロベン島の石灰岩採掘場で、囚人番号466/64として、彼の「政治家としてのキャリア」は終わったはずだった。 独房は約2メートル四方。トイレは床の穴…
毎朝4時に起き、10キロ走る。村上春樹が小説を「製造」する理由
1978年4月、神宮球場。村上春樹は外野席でビールを飲みながら野球を観ていた。打席に立ったのはヤクルトの外国人選手。バットがボールを捉えた瞬間、澄んだ金属音が春の空気を切り裂いた。そのとき、何の前触れもなく、一つの考えが降ってきた。「そうだ…
狂気か、天才か。ゴッホが10年間描き続けた「たった一枚の真実」
1880年、27歳のフィンセント・ファン・ゴッホは無職だった。伝道師の仕事を失い、画廊での勤めも終わり、恋愛にも失敗し、実家の父親からは「できそこない」と思われていた。そのゴッホが突然、絵を描き始める。誰かに頼まれたわけではない。売れる見込…
モハメド・アリが毎朝4時に起きていた、たった一つの理由
1960年代のルイビル、夜明け前の街はまだ眠っている。街灯だけが照らす歩道を、一人の青年が走っている。靴底が地面を叩く音だけが響く。その青年は、走りながら叫んでいた。「俺は最高だ」と。独り言ではなく、確認作業だった。 カシアス・クレイ、後…
勝つためなら、チームメイトさえ敵に変えた男の話
練習が終わっても、ジョーダンはコートに残った。 シカゴ・ブルズの選手たちがロッカールームに引き上げる中、マイケル・ジョーダンはボールを手に取り、同じシュートを繰り返した。角度を変え、距離を変え、足の踏み込みを0.1センチ単位で調整するよう…
チューリングが「機械に考えさせる」ことを諦めなかった理由
1936年、アラン・チューリングは24歳だった。ケンブリッジの薄暗い部屋で、彼はある問いに取り憑かれていた。「人間が計算するとき、脳の中で何が起きているのか」。その問いは、数学の論文を書くためのものではなかった。彼自身にとって、呼吸と同じく…
眠れない天才——テスラが頭の中で完成させた発電機の話
ニコラ・テスラは、ほとんど眠らなかった。 1日2時間の睡眠で足りると本人は語っていた。残りの22時間、彼は考え続けた。回路を、磁場を、まだ誰も名前すら知らない電気の流れを。その思考は「趣味」でも「仕事」でもなく、もはや生理的な衝動に近いも…
放射線に焼かれながら、彼女は手を止めなかった
パリ郊外の粗末な小屋に、揮発性の蒸気が立ち込めている。1898年から1902年にかけて、マリー・キュリーは毎日そこへ通った。目的はただひとつ、ピッチブレンドと呼ばれる鉱石の中に潜む未知の元素を取り出すことだった。 彼女が扱った鉱石の量は、…
トヨタに笑われた男が、世界を変えるエンジンを作るまで
1938年、本田宗一郎は一枚の設計図を手に、トヨタの門を叩いた。自ら開発したピストンリングを売り込むためだった。結果は、一蹴だった。品質基準を満たしていない。担当者は首を横に振り、リングを突き返した。 屈辱だったはずだ。しかし宗一郎はその…
孫正義が「300年の計画」を紙に書いた夜の話
1981年。福岡市の小さなビルの一室に、23歳の青年が一人でいた。会社といっても社員はゼロ。机の上にあるのは、みかん箱と手書きのノートだけだった。孫正義は、その日雇いのアルバイト社員二名を前にして、みかん箱の上に立ち、宣言したという。「将来…